がん治療や糖尿病があっても歯周病は治せます|松山市からも通える歯科が症例から解説
2026年9月16日
「がんの治療が始まるので、歯の治療は落ち着いてからにします」
お気持ちはよく分かります。ただ歯科の側から見ると、順番が逆になっているかもしれません。
放射線治療や抗がん剤による治療が始まると、口の中は今より荒れやすくなります。免疫の働きが落ち、唾液が減り、粘膜が傷つきやすくなるためです。すでに歯ぐきに炎症を抱えたまま治療期に入ると、そこが痛みや感染の出口になります。
この記事では、糖尿病やがん治療といった全身の状態を抱えた方が歯周病の治療を受けるとき、何をどう組み立てるのかをお話しします。当院の症例検討会で扱った内容をもとにしています。
目次
歯ぐきの炎症は、全身と行き来しています
歯周病と糖尿病は、片方が悪くなるともう片方も悪くなる関係にあります。血糖値が高い状態が続くと歯ぐきの炎症が治りにくくなり、逆に歯ぐきの炎症が続くと血糖のコントロールも乱れやすくなります。
つまりお口の治療が、内科の治療を後押しすることがあるということです。「歯科は後回し」と考えられがちですが、内科の先生から歯科受診を勧められて来院される方は珍しくありません。
がん治療の場合も同じです。治療が始まる前に感染の火種を消しておけたかどうかが、その後の過ごしやすさを左右します。
体に負担をかけずに進める、という条件
とはいえ、全身の状態が万全でない方に、通常と同じ進め方はできません。

治療前の状態。歯ぐきが赤く腫れ、触れると出血する部分が広がっていました
歯ぐきの深い部分に入り込んだ歯石を取る処置は、体にとって小さな傷を作る作業でもあります。体力が落ちている時期や、傷の治りが遅くなっている時期には、一度に広い範囲を進めるべきではありません。
実際の進め方としては、こう組み立てます。
| 工夫 | 理由 |
|---|---|
| 来院時間を朝に寄せる | 血糖が下がりやすい時間帯を避けるため |
| 膿が出ている部位は後回しにする | 先に炎症を落ち着かせてから、本格的な処置に入るため |
| 1回の範囲を小さく分ける | 体への負担を一度に集中させないため |
| 内科の主治医と連携する | 治療の予定と体調の波を踏まえて計画するため |
時間はかかります。ただ、急がないという判断そのものが治療の一部です。
結果を決めるのは、医院ではなくご自宅です
ここが本題です。松山市から通われている方にも、毎回の通院よりご自宅での時間のほうが圧倒的に長いことをお伝えしています。
歯石を取るのは私たちの仕事ですが、取ったあとに汚れが付き直さないようにするのは、毎日の歯みがきの仕事です。とくに全身の状態が思わしくない時期は、医院で触れる範囲を小さくせざるを得ないため、ご自宅のケアが占める割合が大きくなります。

処置とセルフケアを続けた後。歯ぐきの色と引き締まり方が変わっています
道具も、いきなり難しいものは使いません。歯ぐきが腫れている時期に歯間ブラシを無理に通すと、痛みで続かなくなります。まずは毛束の細いブラシ(ワンタフトブラシ)から始め、腫れが引いてきた段階で歯間ブラシへ移ります。
当て方も、口で説明するだけでは伝わりません。診療室で鏡を見ながら一緒に練習し、できる場所を少しずつ増やしていきます。奥歯は外側だけでなく、内側からも入れられるようになると変わります。
数字で見ると、変化が分かります
歯周病の治療では、感覚ではなく数値で状態を確かめます。参考として、今回取り上げた1例での変化をお示しします。
これは当院で治療をおこなった1例の記録です。治療結果には個人差があり、同様の結果を保証するものではありません。お口の状態・全身の状態・セルフケアの状況によって、経過は大きく異なります。
| 見ている数値 | 治療前 | 治療後 |
|---|---|---|
| 歯の表面に汚れが付いている割合 | 100% | 8% |
| 触れると出血する部位の割合 | 36% | 6% |
| 歯ぐきの溝の深さ(深い部位) | 8mm以上 | 2〜3mm |
最初の「100%」は、調べたすべての面に汚れが残っていたという意味です。この方の場合、数値が大きく動いた背景には、処置そのものよりもご本人が毎日のケアを続けられたことがあったと考えています。

最終的な状態。歯ぐきが落ち着いたうえで、清掃しやすい形の被せ物を入れています
被せ物を作る段階でも、見た目より掃除のしやすさを優先しました。歯と歯の間に隙間を確保し、汚れが溜まりにくい形にしています。せっかく整えた状態を保つためには、そこが要になるからです。
よくあるご質問
Q. がんの治療中でも歯科にかかれますか
治療の段階によって、できる処置とお待ちいただく処置があります。主治医の先生と連携して判断しますので、治療の予定が分かる書類やお薬手帳をお持ちください。治療が始まる前にご相談いただけると、選べる幅が広がります。
Q. 血糖値が高いと言われています。歯科治療は受けられますか
受けられます。ただし来院の時間帯や処置の範囲に配慮が必要です。直近の検査結果をお持ちいただけると計画が立てやすくなります。歯ぐきの状態が改善すると血糖のコントロールにも良い影響があるとされているため、内科の治療と並行して進める価値があります。
Q. 口を開けているのがつらく、えずいてしまいます
その旨を最初にお伝えください。姿勢や器具の当て方、1回の時間を調整することで負担を減らせます。無理に続けず、短く区切って進める方法もあります。
Q. 歯ぐきの溝が深いままだと言われました。治っていないのでしょうか
深さだけで判断するものではありません。触れても出血しない状態であれば、炎症は落ち着いていると考えます。ただし深い部分は汚れが溜まりやすく、ご自宅のケアだけでは届かないため、定期的に医院で洗浄する必要があります。
「体調が落ち着いてから」では、間に合わないことがあります
全身の治療が控えているときほど、お口を後回しにしたくなります。ただ実際には、その治療が始まってからのほうが、歯科でできることは減ります。
今回のように、全身の状態を抱えていても進められる方法はあります。時間をかけ、範囲を分け、ご自宅のケアを軸に据える。遠回りに見えても、急がない組み立てのほうが結果につながることがあります。
松山市からお越しの方にも、内科に通いながら歯科を並行して受けていらっしゃる方が多くおられます。ご自身の状況で何ができるのか、まずは伺わせてください。
出典・参考資料
本記事に記載した数値は、測定方法・対象・個人差によって結果が異なります。上記の出典で直接裏付けられていない数値についてはあくまで目安としてご覧ください。診断や治療方針は、実際の検査結果にもとづいて個別にご説明いたします。
この記事の監修者
鎌倉 聡
愛媛インプラントクリニック かまくら歯科 院長/歯科医師
日本口腔インプラント学会 専門医、ICOI国際インプラント学会 専門医・指導医、日本歯周病学会 歯周病専門医
最終監修日:2026年9月10日












