入れ歯を必要とする高齢者が減少?8020運動と予防歯科
2018年12月5日
入れ歯はなぜ必要なのか
歯(永久歯)を1本や2本失ったところで、なにも支障はないと考える人もいると思いますが、歯を1本失うだけで咬み合わせにずれが生じる場合や、1本抜けることでスペース(空間)が生まれてしまい、そのスペースに左右の歯が移動する傾向があります。
歯並びや咬み合わせがずれるだけで、食べ物が噛みづらくなってしまう場合や、周辺の歯や組織が抜けてしまった歯の役目を補うために過度に力が加わり、歯を支えている歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)を吸収し新たに歯が抜け落ちてしまう恐れもあり、歯(永久歯)が抜けたのにも関わらず、治療をおこなわず放置してしまうと、大変リスクをともないかねません。歯を抜けたまま放置している場合は早急に歯科医院で治療を受けましょう。
失った歯を補う補綴物はブリッジや部分入れ歯、総入れ歯です。ブリッジは抜けてしまった歯の両隣の健康な歯を2本削り、削った両隣の2本の歯を支えに人工の歯(ダミー)を設置し補う補綴物です。部分入れ歯は、装着するために健康な歯を少量削り、クラスプと呼ばれる金属のバネをかけて固定します。総入れ歯は上の歯はまた、下の歯すべての歯がない場合に装着する義歯のことです。
いずれも、歯周病や虫歯によって歯を失ったがために装着することになる補綴物です。
入れ歯を必要とする高齢者が減少した理由とは
しかし1999年当時の65歳以上74歳までの人たちの歯の残存数は15本、2005年には16.8本、2011年には19.3本、2016年には20.8本となり、永久歯全28本(親知らず入れると34本)中、65歳から74歳まで平均して20.8本もの歯を維持できるようになったと調査結果から推測できます。
なぜこれほどまでに残存数を増やすことができたのでしょうか。その理由はやはり現在の歯科医療にも反映されている、「8020運動」と「予防歯科」の普及ではないでしょうか。「8020運動」とは、1989年厚生省(のちの厚生労働省)が永久歯20 本あまりあれば、食べ物を自身の歯で噛み砕き、美味しく食事ができると考えられることから、“80歳で20本の歯を維持しよう“と活動をはじめたものであります。
人間にとって“食”は生きるために必要なものであり、自身の歯で食べ物を噛み砕き、美味しく食べ栄養を摂取することが健康にも繋がります。部分入れ歯や総入れ歯である義歯を装着して食べ物を噛み砕く力は、自身の歯で噛み砕く力より40%も低下してしまい、十分に噛み砕くことができなくなる可能性が高くなります。
「8020運動」を遂行するには、「予防歯科」がとても重要となります。虫歯になってから、歯周病が進行してから治療だけをおこなっているだけでは、80歳で20本もの歯を維持することは困難であり、日頃からの「予防歯科」が80歳までの残存数を左右させます。
予防歯科では定期的に歯の表面のクリーニングをし、虫歯や歯周病の原因であるプラークの除去や定着を防いだり、歯ブラシでは除去することができない歯石をスケーリングで除去することで、新たな歯垢の定着を防いだり、正しい歯磨き方法を指導することで患者さまの口腔清掃への意識を高めるなどの「予防歯科」を各歯科医院が積極的におこなうようになりました。
調査を始めた1993年当時の75歳から84歳の歯の残存数は6.2本でありましたが、1999年には8.6本、2005年には10.1本、2011年には14.2本、2016年には16.9本となり、およそ30年あまりのうちに約10本もの歯を多く維持できるようになり、80歳で自身の歯を維持できている割合は初めて50%をも超える結果となり、入れ歯を必要とする高齢者は減少していることに繋がります。