顎が小さい子への矯正治療
2016年8月19日
こんにちは。愛媛インプラントクリニックかまくら歯科、勤務医の宮田です。あっという間にお盆が過ぎ、暦の上では秋になりました。とはいえ、まだまだ猛暑が続いていますね。
ここ数日は仕事に影響しないよう種目をしぼってオリンピック観戦を楽しんでいるのですが、皆さんはいかがですか?
さて、現在当院では急速拡大装置という矯正装置の使用症例が増えてきています。これまではプレートによる床矯正を主に行ってきましたが、ここ最近矯正専門医の先生方のセミナーに参加しているとプレートから急速拡大装置に移行している矯正医が多くいらっしゃるからです。ではなぜ急速拡大装置なのか、従来のものと何が違うのかについて解説したいと思います。
まず、これまでのプレートも急速拡大装置も発想は同じです。上顎に歯が並ぶためのスペースが無いので装置を使って顎を広げようとしています。しかしプレートの場合小さな力で顎を広げるため歯の頭に近い部分はしっかり広がりますが、歯の根っこに近い部分の骨は広がりが緩やかです。これに対して急速拡大装置はその名の通り強い力で短期間に上顎の骨を広げていきます。こうすることで歯の根っこに近い部分の骨が広がり、後戻りしにくくなるのです。これまでも当院では時に行ってきた治療ですが、取り外しできるプレートの負担の軽さから床矯正を主としてきました。しかし第1期治療としては急速拡大装置が優れているのでは?という判断に至り現在積極的に採用しているところです。
また、この急速拡大装置は小児期に使用することで上顎の骨が左右に開いてくれます。それはなぜでしょう?
実は下のCTの画像の様に、上顎の骨は左右が別々にできていて真ん中の正中口蓋縫合というところでくっついています。そして成長期よりまえはこの正中口蓋縫合の部分が軟骨になっていて左右に向かって成長しているので、ここに力を加えると比較的簡単に骨が開きます。そしてそのまましばらく固定しておくことで真ん中に骨ができて後戻りを防いでくれるのです。
(青い矢印の先が正中口蓋縫合)
当院で治療した患者さんの写真ですが・・・
わずか3週間でここまで顎が開きました!かなりの効果ですね。
さらにこの治療には思わぬ別の効果があります。絶対ではないのですが口呼吸や鼻のつまりが改善されることがあるのです。明確に論文になっている訳ではないのですが考えられる理由はこうです。
鼻腔(鼻の穴から喉にかけての空気の通り道)は口のすぐ上にあって、その底は上顎の骨でできています。つまり正中上顎縫合が広がることは鼻腔の底を広げることに繋がり、結果鼻の通りがよくなるという理屈です。もちろん必ずこうなるという事ではありませんが比較的よく見られる変化だということです。
(黄色の○の部分が鼻腔 青色の矢印の先が正中上顎縫合)
ちなみに口呼吸は非常に良くありません。口から息を吸うと呼気は鼻腔で与えられるはずだった温度と湿度を持たないまま肺にはいります。また鼻粘膜で取り除くはずの菌等も直接体に入ります。また口が乾き虫歯や歯周病になり易くなり、口が開くことで歯並びも悪くなります。(出っ歯になることが多い)顎の成長を阻害され、姿勢も悪くなり睡眠時無呼吸も発症するといわれています。上顎の発達不足はその後の全身の発育にも影響をあたえます。
その他歯並びに影響を与える癖やトレーニングのお話を毎月2回程度土曜日に開催していますので気になる方は是非ご参加下さい。